おくるみは、「いる/いらない」で決めるものではありません。
日本小児整形外科学会は、おくるみも、おひなまきも、「我々はこれらを行うことを否定する立場ではありません」とはっきり書いています。そのうえで、条件をひとつだけ付けています。⚠️ 脚を巻かないこと。
つまり答えは「買う/買わない」ではなく、「巻くなら上半身だけ。脚は開いたままにする」です。これを守れるなら、専用のおくるみでも、家にあるバスタオルでもかまいません。守れないなら、どんなに評判のいい商品でも同じことです。
結論
- おくるみをやめなさいとは、学会は言っていません。「否定する立場ではありません」と明記されています
- ★ 条件はひとつだけ。⚠️ 脚(あし)まで巻かないこと。上半身と手を巻いたあと、脚が開く状態を確認する
- ★ 監修の助産師さくらの言葉では、「赤ちゃんは腕と足のM字の姿勢が良い姿勢なので、それを維持したまま巻くように意識すればいい」
- ⚠️ もうひとつの条件はきつすぎないこと。⚠️ きつく締めるための道具ではありません
- ⚠️ 学会が「股関節に悪い」と挙げているのは、巻き方と厚着です。おくるみという製品そのものではありません
- 判断軸は商品選びではなく巻き方。専用品かバスタオルかは、その次の話です
- ⚠️ 秋冬生まれは、おくるみより先に「防寒の厚着」に注意(学会が名指しで書いています)
- 「いつから・いつまで」はスワドルはいつからいつまで使える?にまとめています
学会が実際に書いていること
まず、赤ちゃんの脚の「正常」がどういう状態か。
赤ちゃんはO脚で、カエルのようにお股をM字に開いているのが正常で、股関節の動きを自由にさせる扱いはたいへん良いことです— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
そのうえで、こう続きます。
しかし”おくるみ”や厚手の衣類など股関節の動きを制限したり、O脚を直そうと脚(下肢)を真っすぐに伸ばしたり、タオルをひざに巻き付けたりするようなことは股関節に悪いということは知っておきましょう— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
ここだけを読むと「おくるみはダメ」に見えます。ですが、同じページには続きがあります。
夜泣きでぐずる赤ちゃんのための“おくるみ(Swaddling)”や“おひなまき”といった手法がなされ効果があるようです。…手の離れない”置くと泣く”赤ちゃんには、さすがのお母さんも疲弊し途方に暮れ、精神的に追いつめられたりします。場合によっては股関節脱臼よりも深刻な事態なのかもしれません。ですから— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
我々はこれらを行うことを否定する立場ではありません— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
★ 「危ないからやめよう」でも「便利だから買おう」でもない、第三の答えが、公的な学会の文章として存在します。
そして条件が示されます。
脚(あし)までグルグル巻きになると、股関節が伸びた悪い状態になってしまうのです。抱っこされた感覚は上半身だけの巻きつけで効果があるようですので、上半身と手を巻きつけた後、脚(あし)は巻かずにしっかりと開く状態を確認しましょう— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
学会は同じページで、海外でも同じことが問題になったと書いています。
このことは海外の小児整形外科でも問題になり、“安全なおくるみ”のための解説動画(20秒)が公開されています。— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
巻き方は、「M字を保つ」とセットです
⚠️ ここから先は、条件と手順をひとつづきで読んでください。手順だけを取り出すと、意味がなくなります。
監修の助産師さくらの言葉は、こうです。「きつすぎたりするわけじゃなければ」、そして——
★ 「赤ちゃんは腕と足のM字の姿勢が良い姿勢なので、それを維持したまま巻くように意識すればいい」(助産師さくら)
学会の条件も、同じところにかかっています。
上半身と手を巻きつけた後、脚(あし)は巻かずにしっかりと開く状態を確認しましょう— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
この2つを重ねると、巻くときにすることは3つです。
1. 巻くのは上半身と手まで。 脚は布の中で自由にしておきます
2. 腕と脚のM字の姿勢を、そのまま保つ。 ⚠️ 脚をまっすぐ伸ばして整えない(学会が「O脚を直そうと脚を真っすぐに伸ばす」ことを名指しで挙げています)
3. ⚠️ 巻き終わったら、脚が開くかを目で確認する。 きつければ、ゆるめます
★ いちばん大事なのは3つめです。巻き終わりが、確認のタイミングになります。
なお、これは家庭だけの手法ではありません。助産師さくらは「実際に病院でも赤ちゃんに巻いたりしているシーンはあります」と話しています。⚠️ ただし、そのことは「きつく巻いてよい」という意味ではありません。 条件は上の3つのままです。
おひなまきは、していいのでしょうか
学会は「おひなまき」を名指しで挙げたうえで、否定していません。 条件は同じで、脚まで巻かないことです。
監修の助産師さくらの見方も、同じ線でした。「悪くないと思います。きつすぎたりするわけじゃなければ」。 そして、広まっている巻き方と学会の条件が食い違うのかどうかについては、こう話しています。「広がっている巻き方も基本、足をM字な感じにする、というふうになっていると思うので、一致しているんじゃないか」。
⚠️ 「〜と思う」という言い方のまま、お伝えします。 世の中で「おひなまき」と呼ばれている巻き方をすべて調べて確かめたわけではありません。⚠️ 名称で安心せず、目の前の巻き上がりを見てください。
現時点で確実に言えるのは、学会が付けた条件は名称ではなく「脚」にかかっている、ということです。おくるみと呼ぼうと、おひなまきと呼ぼうと、判断は同じところで分かれます。
買うか、バスタオルで足りるか
結論が「巻き方」である以上、専用品でなければいけない理由は、学会の文章の中には見あたりません。
- 学会が問題にしているのは、布の種類ではなく、脚まで巻いてしまうこと
- ⚠️ おくるみは、乳幼児用品のSGマークの対象品目には入っていません(全26品目を確認)。「専用品だから安全基準を満たしている」とは言えません
★ 買う理由があるとすれば、「安全だから」ではなく「毎回きれいに巻けるから」です。 バスタオルでも条件は満たせますが、厚みや大きさによっては脚まで巻き込みやすくなります。巻き終わりに脚が開いているかを確認できるかどうかが、選ぶ基準です。
なお、「必ず専用設計のものを」と書いている記事は、おくるみを販売しているサイトのものであることがあります。読むときに、書き手の立場を見てください。
⚠️ 秋冬生まれは、おくるみより先に「厚着」です
これは上位の記事がほとんど触れていない点です。学会は、防寒の厚着そのものを名指ししています。
事実秋冬生まれの赤ちゃんに股関節脱臼が多いことは、衣類による防寒対策が影響していることを証明しています。お部屋を暖かくして薄着、もしくは下半身を自由にする育児を心がけましょう— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
衣類についても、具体的な指摘があります。
お股の間までボタンで止めてしまう衣類は、もしサイズが小さければ、股関節の動きをじゃましてしまうため要注意です。お股のボタンはとめずヒラヒラと自由さを保ってあげてください。— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
★ 「おくるみをやめれば安心」ではありません。 サイズの小さい肌着のボタンを股まで留めているほうが、日常的に長い時間、脚を縛っていることもあります。
部屋を暖かくして薄着にする話は赤ちゃんの冬の室温にまとめています。
「置くと泣く」で限界のとき
学会の文章で、いちばん珍しいのはこの部分だと思います。「さすがのお母さんも疲弊し途方に暮れ、精神的に追いつめられたりします。場合によっては股関節脱臼よりも深刻な事態なのかもしれません」——医学的な文書が、親の限界のほうを重く見ています。
★ だから学会は「やめなさい」と書かず、「脚は巻かないで」と書いたのだと読めます。 おくるみを取り上げるのではなく、条件をつけて使えるようにしている、という順序です。
置くと泣く時期の話は赤ちゃんが泣き止まないときにもまとめています。
調べても分からなかったこと
正直に書きます。
- 「いつやめるか」を明記した日本の公的文書は、今回見つけられませんでした。 上位の記事は揃って「生後3〜4か月」と書いていますが、5本とも出典を示していません。 ここでは時期を断定しません(時期そのものはスワドルはいつからいつまで使える?で扱っています)
- おくるみと乳幼児突然死症候群(SIDS)の関係についても、こども家庭庁のページにおくるみへの言及は確認できませんでした。 「リスクが上がる」とも「下がる」とも書かれていません
- なお、そのこども家庭庁のページは、SIDSと窒息をはっきり分けています
SIDSは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なります。— こども家庭庁「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
⚠️ この2つを混ぜて「おくるみは危ない」と書いている記事があります。公式の文章では別のものとして扱われています。
股関節のことが気になったら
学会は、早期発見のチェックポイントを挙げています。
そのためのチェックポイントとしては股関節の開きの硬さ(開排制限)やシワ(皮膚溝)の非対称があります— 日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」
⚠️ これは、家庭で判定するためのものとしては案内しません。 監修の助産師さくらの答えも、「気になったら健診で診てもらう、にとどめていい」でした。
★ 健診の場では、この股関節の開きや、皮膚の溝の左右差を見ています。 つまり、家庭で判定しなくても、見てもらう機会はあらかじめ用意されています。生まれたときに病院で確認しているところも多く、生まれつきのものは、その時点で見つかっていることが多い、というのが助産師さくらの説明でした。
⚠️ そのうえで、生まれたあとに心配になったときは、健診の機会か、近くのクリニックで相談してください。 自宅で「異常かどうか」を決めようとしなくて大丈夫です。
健診で何を見るかは3〜4か月健診にまとめています。
この記事のまとめ
- ★ 学会はおくるみもおひなまきも否定していません(「我々はこれらを行うことを否定する立場ではありません」)
- ★ ⚠️ 条件は「脚(あし)は巻かずにしっかりと開く状態を確認しましょう」の一点
- ★ 巻くときは腕と脚のM字の姿勢を保つ。⚠️ きつすぎないこと(監修:助産師さくら)
- 手順は3つ。上半身と手まで/M字を保つ/巻き終わりに脚が開くか確認する
- 学会が「股関節に悪い」と挙げているのは巻き方と厚着であって、製品そのものではありません
- 専用品でなければならない理由は、学会の文章の中には見あたりません。 決め手は巻き方です
- ⚠️ 秋冬生まれは、防寒の厚着と、股まで留める小さい衣類に注意
- ⚠️ 股関節の開きや皮膚の溝の左右差は健診で見ている項目。⚠️ 家庭で判定するものとしては案内しません。気になったら健診やクリニックで相談を
この記事について
文=やすぴ(イクジヒロバ 運営者)。医療・安全に関わる部分は、助産師さくらが内容を確認しています。内容は日本小児整形外科学会およびこども家庭庁の公表資料にもとづき、2026年(令和8年)9月8日時点で記載しています。
⚠️ この記事は、赤ちゃんの状態を診断したり、受診の要否を判断したりするものではありません。 脚の開きが硬い、シワの左右差が気になるなど心配なことがあるときは、健診の機会か、かかりつけの小児科・整形外科にご相談ください。運営者・監修者のプロフィールは運営者情報をご覧ください。
日本小児整形外科学会「赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―」 https://www.jpoa.org/news/topics/1585/
こども家庭庁「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」 https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids

