出産で仕事を休むあいだ、給与は止まります。その期間の収入を補うのが 出産手当金 です。
ただ、この制度は名前が誤解を生みます。「出産したらもらえるお金」に聞こえるからです。
実際には違います。
出産手当金は、健康保険に入っている本人が、仕事を休んだときの給付です。
だから、夫の扶養に入っている人はもらえません。出産していても、です。ここを勘違いしたまま家計の計画を立てると、あとで数十万円の穴が空きます。
まず「自分はもらえる側か」から確認しましょう。
結論:判定と金額
- 対象は 健康保険の被保険者本人。⚠️ 扶養に入っている人(第3号)は対象外です
- ⚠️ 国民健康保険にはありません。自営業・フリーランスはもらえません
- 期間は 出産日以前42日(多胎は98日)から、出産の翌日以後56日まで
- 金額は 1日あたり「支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2」
- 退職しても、条件を満たせばもらえます
- 産後56日を過ぎたら、今度は育児休業給付金にバトンが渡ります
⚠️ まず判定:あなたはもらえますか
| あなたの立場 | 出産手当金 |
|---|---|
| 会社員・公務員(本人が健康保険に加入) | ⭕ もらえます |
| 法人の役員(健康保険に加入) | ⭕ もらえます |
| 夫の扶養に入っている(第3号被保険者) | ❌ もらえません |
| パート・アルバイトで、自分は健康保険に入っていない | ❌ もらえません |
| 自営業・フリーランス(国民健康保険) | ❌ もらえません |
| 退職した(条件あり) | △ 下の条件次第 |
| 任意継続被保険者 | ❌ 原則もらえません |
なぜ扶養だともらえないのか
出産手当金は、「本人が働いて得ていた収入が、休むことで止まった」ことを補う給付だからです。
扶養に入っている人は、その健康保険の被扶養者であって、被保険者ではありません。休むことで止まる給与が、この保険の上には無い、という整理です。
⚠️ 出産育児一時金(50万円)とは扱いが違います。 一時金のほうは扶養に入っていても支給されます(家族出産育児一時金)。同じ「出産のお金」でも、性格が別なのです。→ 出産育児一時金は50万円
自営業・フリーランスの場合
国民健康保険には、出産手当金がありません。 法律上は市区町村が条例で定めれば実施できる「任意給付」ですが、実施している市区町村がありません。
こちらは事情が込み入っているので、別にまとめてあります。→ 自営業・フリーランス・経営者に育休はない?
いつからいつまで
出産の日(実際の出産が予定日より後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲内で、仕事を休んで給与が支払われなかった期間が対象です。
⚠️ 予定日より遅れたときは、その分も対象です
ここは知らないと損をします。
出産が予定日より遅れた場合、遅れた日数も支給の対象になります。
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出産予定日前42日 + 予定日から実際の出産日までの日数 + 産後56日
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⚠️ 逆に予定日より早く生まれた場合は、その分だけ産前の期間が短くなります。
いくらもらえるか
1日あたりの金額は、こう計算します。
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支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2
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⚠️ 手取りではなく、標準報酬月額(社会保険料を決めるときの区分)が基準です。残業代や通勤手当も含まれた額なので、額面の給与に近い数字になります。
加入期間が12か月に満たないとき
転職や入社まもない場合です。この場合は、次のいずれか低いほうを使って計算します。
- 支給開始日の属する月以前の、直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
- 全被保険者の標準報酬月額の平均額(当該年度の前年度9月30日時点)
⚠️ 低いほうが使われる点に注意してください。加入して間もない人ほど、思ったより少なくなることがあります。
休んでいる間に給与が出た場合
給与が出たら、その分は引かれます。
ただし、⚠️ 給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は、差額が支給されます。「少しでも給与が出たらゼロ」ではありません。
全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/childbirth/001/index.html
退職しても、もらえることがあります
「産休に入る前に辞めるから、関係ない」と思っている方へ。条件を満たせば、退職後も受け取れます。
条件は2つです。
1. 資格喪失日(退職日の翌日)の前日までに、被保険者期間が継続して1年以上あること
2. 被保険者資格を喪失した日の前日に、出産手当金を受けている、もしくは受けられる状態であること
⚠️ 2つ目が引っかかりやすいところです。退職日に出勤してしまうと、「受けられる状態」ではなくなり、対象外になります。
最終出社日と退職日をずらす、有給を使うなど、辞め方で結果が変わります。ここは先に確認しておいてください。
ここは、ふたりで見ておいたほうがいい部分です。 退職の時期は家計に直結しますし、本人だけで判断すると見落としやすいところだからです。
産後56日のあとは、育児休業給付金
出産手当金は、産後56日で終わります。そこで終わりではありません。
産後57日目からは、育児休業給付金に切り替わります。制度も、お金の出どころも別ですが、期間はつながるように設計されています。
| 時期 | 使う制度 | 出どころ |
|---|---|---|
| 産前42日〜産後56日 | 出産手当金 | 健康保険 |
| 産後57日〜 | 育児休業給付金 | 雇用保険 |
⚠️ 産休中は健康保険料・厚生年金保険料も免除されます(申出が必要)。給付が入り、保険料が出ていかない期間になります。
パートナー側の制度は、こちらにまとめています。→ 産後パパ育休は「手取り10割」になる?
手続きと、入金の時期
- 申請書は勤務先経由で健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)へ
- 事業主の証明と、医師または助産師の証明が要ります
- ⚠️ 産後にまとめて申請するのが一般的です。産前分だけ先に申請することもできますが、勤務先の運用によります
⚠️ 入金は、出産してからしばらく後になります。 産休に入った時点では入ってきません。当面の生活費は手元に用意しておいてください。
出産前後の手続き全体は、こちらに一覧があります。→ 出産後の手続き全リスト
よくある質問
Q. 専業主婦(夫の扶養)です。もらえますか?
A. ⚠️ もらえません。出産手当金は被保険者本人が対象です。ただし出産育児一時金(50万円)は支給されます。
Q. 夫は出産手当金をもらえますか?
A. もらえません。出産手当金は出産する本人の給付です。⚠️ 父親側は育児休業給付金・出生後休業支援給付金のほうになります。
Q. パートですが、健康保険には入っています。
A. ⭕ 被保険者本人であれば対象です。雇用形態ではなく、自分が健康保険に入っているかで決まります。
Q. 産休中に会社から給与が出ます。もらえませんか?
A. 給与の日額が出産手当金の日額より少なければ、差額が支給されます。
Q. 育児休業給付金と同時にもらえますか?
A. 期間が重ならないように設計されています。産後56日までが出産手当金、その後が育児休業給付金です。
Q. 帝王切開でも同じですか?
A. 同じです。⚠️ なお帝王切開は健康保険の対象になるため、高額療養費の対象になることもあります。
まとめ
- 出産手当金は 健康保険の被保険者本人 が仕事を休んだときの給付
- ⚠️ 扶養に入っている人・国民健康保険の人はもらえません
- 期間は 産前42日(多胎98日)〜産後56日。⚠️ 予定日より遅れた分も対象
- 金額は 標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2(加入12か月未満は低いほうで計算)
- ⚠️ 退職後ももらえることがあります。ただし退職日に出勤すると対象外
- 産後57日からは育児休業給付金にバトンが渡ります
名前から受ける印象と、実際の中身がずれている制度です。「出産したらもらえる」ではなく「働いていた本人が休んだときにもらえる」。 ここだけ押さえておけば、判断を間違えません。
この記事について
文=やすぴ(イクジヒロバ 運営者)。制度の内容は全国健康保険協会(協会けんぽ)の公表資料をもとに記載しています。⚠️ 健康保険組合によって独自の付加給付がある場合があります。個別の金額・要件は、加入している健康保険と勤務先にご確認ください。運営者のプロフィールは運営者情報をご覧ください。

