「産後パパ育休、手取り10割になるらしい」——そう聞いて調べはじめた方が多いと思います。
結論からいうと、本当です。ただし条件があります。そして、その条件を説明している記事の多くが、少し不正確です。
いちばん誤解されているのはここです。
「夫婦そろって14日以上の育休を取らないと、10割にならない」——父親が申請する場合、これは当てはまりません。
厚生労働省の資料に、はっきり書かれています。順に整理します。
結論:先に押さえる4つ
- 産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に合計4週間(28日)まで。2回に分けて取れます
- 給付は 67%。そこに出生後休業支援給付金の13%が上乗せされて 80%
- 給付金は非課税で、育休中は社会保険料も免除。だから80%でも手取り10割相当になります
- ⚠️ 上乗せの13%には条件があります。ただし 父親が申請する場合、母親の育休取得は要件になりません
ここは、ふたりで知っておいたほうがいい話です。 給付の条件が、相手の働き方によって変わるためです。
そもそも「産後パパ育休」とは
正式には 出生時育児休業 といいます。
- いつ — 子の出生後8週間以内
- どれだけ — 合計4週間(28日)まで
- 分け方 — 2回まで分割できます
通常の育児休業(原則1歳まで)とは別枠です。産後パパ育休を28日使ったうえで、そのあと育児休業を取ることもできます。
⚠️ 名前に「パパ」と付いていますが、これは産後休業を取らない側が使う制度、という意味です。
お金の話:なぜ80%で手取り10割になるのか
三段構えになっています。
| 内容 | |
|---|---|
| 出生時育児休業給付金 | 休業開始時賃金日額の 67% |
| 出生後休業支援給付金 | さらに 13% 上乗せ |
| 合計 | 80% |
ここで終わりではありません。手取りで見ると、さらに増えます。
- 給付金は非課税です。所得税がかかりません
- 育休中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されます(申出が必要)
- 勤務先から給与が出ない場合、雇用保険料の負担もありません
働いているときは、給与から税金と社会保険料が引かれています。その分が引かれないので、額面80%でも手取りはほぼ変わらない——これが「手取り10割相当」の中身です。
上限額があります
⚠️ いくら給与が高くても、青天井ではありません。
休業開始時賃金日額の上限額は16,540円(令和9年7月31日までの額。毎年8月1日に改定されます)。
28日間フルに取った場合の上限は、こうなります。
| 28日の支給上限 | |
|---|---|
| 出生時育児休業給付金(67%) | 310,290円 |
| 出生後休業支援給付金(13%) | 60,205円 |
⚠️ ここが誤解されています:母親の育休は要るのか
出生後休業支援給付金の条件は、こう説明されることが多いです。
間違いではありません。ただし、これには例外があります。
厚生労働省の資料には、「配偶者の育児休業を要件としない場合」が7つ挙げられています。
1. 配偶者がいない
2. 配偶者が子と法律上の親子関係がない
3. 配偶者から暴力を受け別居中
4. 配偶者が無業者
5. 配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇用される労働者でない
6. 配偶者が産後休業中
7. 1〜6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
そして、資料にはこう書かれています。
つまり——出産した母親は産後休業中です。だから 6番に当たります。
父親が申請するとき、母親が育休を取っているかどうかは、条件になりません。 父親自身が14日以上取っていれば、上乗せの対象です。
逆に、母親が申請するときは
こちらは父親の育休が条件になります。父親が「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「遅いほうの日から8週間を経過する日の翌日」までに、通算14日以上の育児休業を取っている必要があります。
⚠️ ただし父親が自営業・フリーランス・無業などの場合は、上の4番・5番に当たるので要件から外れます。
同じ制度でも、どちらが申請するかで条件が変わる。 ここを取り違えると、取れるはずの給付を諦めることになります。
厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」2026(令和8)年8月1日改訂版 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001461102.pdf / 厚生労働省「出生後休業支援給付金」リーフレット https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-hellowork/content/contents/002131525.pdf
28日をどう使うか
2回に分割できるので、使い方に幅があります。
- 出産直後にまとめて28日 — 退院後の生活が立ち上がるまで一緒にいられます
- 退院時に14日+1か月健診の前後に14日 — 里帰りから戻るタイミングに合わせる形
- 14日だけ取って、残りは通常の育児休業に回す — 上乗せの条件は14日以上なので、これでも13%は付きます
⚠️ 14日が一つの分かれ目です。13日では上乗せが付きません。
そのうえで、28日をどこに置くかは、家庭の事情で決めていい部分です。上の子がいるか、里帰りするか、里帰りから戻るのがいつか——ここは制度ではなく生活の話です。
手続きはどうする
- 申請は勤務先を通じてハローワークへ。原則として、出生時育児休業給付金の申請と同じ用紙で行います
- 育休そのものの申出は、原則2週間前までに勤務先へ
- ⚠️ 出産手当金(母親がもらうもの)はハローワークの制度ではありません。 加入している健康保険へ問い合わせてください
出産後の手続き全体は、こちらにまとめてあります。→ 出産後の手続き全リスト
どちらがどれを担当するかは、出産後の手続き、どっちがやってもいい を参考にしてください。
よくある質問
Q. 産後パパ育休と育児休業は、両方取れますか?
A. 取れます。別枠の制度です。産後パパ育休(28日まで)を使ったあと、育児休業(原則1歳まで)を取ることができます。
Q. 14日は連続していないとだめですか?
A. 通算で14日以上あれば要件を満たします。産後パパ育休は2回まで分割できます。
Q. 妻が専業主婦でも、上乗せはもらえますか?
A. もらえます。⚠️ 配偶者が無業者の場合は「配偶者の育児休業を要件としない場合」に当たるためです。
Q. 育休中は本当に給与ゼロですか?
A. 勤務先によります。賃金が支払われる場合、その額に応じて給付が減額または不支給になることがあります。
Q. 給付はいつ振り込まれますか?
A. 申請後の支給決定を経てからです。休業に入ってすぐ入金されるわけではないので、⚠️ 当面の生活費は手元に用意しておいてください。
Q. 出産育児一時金とは別ですか?
A. 別です。→ 出産育児一時金は50万円
まとめ
- 産後パパ育休は、出生後8週間以内に合計28日まで、2回に分割可
- 給付は 67%+13%=80%。非課税+社会保険料免除で手取り10割相当
- ⚠️ 上限は休業開始時賃金日額16,540円(令和9年7月31日までの額)
- ⚠️ 父親が申請する場合、母親の育休取得は要件になりません(母親は産後休業中=例外に該当)
- ⚠️ 逆に母親が申請する場合は、父親の14日以上が条件になります
- 14日が分かれ目。13日では上乗せが付きません
制度の名前に「パパ」と付いているせいで、父親だけの話に見えます。実際は、どちらが申請するかで条件が変わる制度です。だから、ふたりで見ておくのがいちばん確実です。
この記事について
文=やすぴ(イクジヒロバ 運営者)。制度の内容は厚生労働省の公表資料をもとに記載しています。⚠️ 個別の要件や金額は勤務先・ハローワークにご確認ください。運営者のプロフィールは運営者情報をご覧ください。

