復帰前後の手続きには、⚠️ 出すか出さないかで将来の年金額が変わるものが混ざっています。
この記事は会社に雇われて働く方(健康保険・厚生年金保険の被保険者)向けです。⚠️ 公務員など共済組合に加入している方は届出先も取り扱いも異なります。 共済組合の案内をご確認ください。
結論:出さないと誰も代わりにやってくれないもの
復帰まわりには、会社が進めるものと、⚠️ 本人が「出したい」と言わないと始まらないものがあります。やっかいなのは後者。条文が「申出をしたときは」という作りで、申出がなければ動きません。
復帰のときに動く3つの手続き
| 手続き | 何のため | 起点 | 出さないと | |
|---|---|---|---|---|
| ① | 育児休業給付金の最後の支給申請 | 休業分の給付を受け取る | 会社(本人の場合も) | ⚠️ 受け取れないまま終わりうる |
| ② | 育児休業等終了時報酬月額変更届 | 下がった給料に保険料を合わせる | ⚠️ 本人の申出 | 高い保険料が続きうる |
| ③ | 養育期間標準報酬月額特例申出書 | ②で下がった分、年金を減らさない | ⚠️ 本人の申出 | 年金額が下がったまま |
★②と③はセットです。②で保険料が下がると将来の年金も下がる。その下がりを打ち消すのが③です。
① 育児休業給付金の最後の申請
復帰したら自動で止まるわけではない
育児休業給付金は休業期間を「支給単位期間」に分け、区切りごとに申請して支給されるしくみです(雇用保険法 第61条の7)。⚠️ 復帰すれば最後の分が自動で振り込まれるわけではありません。
給付率は休業日数が通算180日に達するまで67%、それ以降50%。上限もあり、厚生労働省の資料では支給日数30日の上限額は67%で332,454円(⚠️ 令和9年7月31日までの額)。金額は育児休業給付金はいくら?へ。
誰が申請するのか
2回目以降の支給申請について、厚生労働省の資料にはこう書かれています。
やむを得ない理由で、事業主経由での提出が困難な場合や、被保険者本人が自ら申請手続を希望する場合は、被保険者本人が提出することも可能です。— 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」
★原則は会社を通しますが、本人が出す道もあるということです。提出時期はハローワークが交付する「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」に印字されています。⚠️ 復帰前に「最後の1回を会社が出すのか、自分で出すのか」を確認しておくと安心です。
⚠️ 申請できる期間には限りがある(時効2年)
失業等給付等の支給を受け、又はその返還を受ける権利…は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によつて消滅する。— 雇用保険法 第74条第1項
⚠️ 出しそびれたまま放置すると受け取れなくなることがあります。心当たりがあれば勤務先か管轄のハローワークへ早めに相談を。
予定より早く復帰したとき
支給申請書には支給期間の末日より前に職場復帰して休業を終了した場合に記載する欄があります。⚠️ 会社に復帰日を正確に伝えることが大事です。産後パパ育休は別の給付です(産後パパ育休は「手取り10割」になる?)。
② 育児休業等終了時報酬月額変更届
時短などで給料が下がったら、保険料を実態に合わせる届出
時短にすれば給料は下がります。ところが保険料のもとになる「標準報酬月額」は原則年1回しか見直されず、⚠️ 育休前の高い給料を前提にした保険料を払い続けることに。それを早めに直すのがこの届出です。
…事業主を経由して…申出をしたときは、…育児休業等終了日の翌日が属する月以後三月間(…報酬支払の基礎となった日数が十七日未満である月があるときは、その月を除く。)に受けた報酬の総額を…報酬月額として、標準報酬月額を改定する。— 健康保険法 第43条の2第1項
厚生年金保険法 第23条の2もほぼ同じ内容です。
⚠️ 対象になる条件——出どころを分けて読む
ここは条文の要件と日本年金機構の案内の要件を分けて読む必要があります。
| 出どころ | 内容 |
|---|---|
| 条文(健保法43条の2/厚年法23条の2) | 事業主を経由して申出をすること/終了日に3歳未満の子を養育していること/支払基礎日数17日未満の月は除くこと |
| 日本年金機構の案内 | 改定前後の標準報酬月額に1等級以上の差が生じること/3か月のうち少なくとも1か月の支払基礎日数が17日(特定適用事業所の短時間労働者は11日)以上 |
これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額※との間に1等級以上の差が生じること。— 日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
⚠️ 「1等級以上の差」は条文には書かれておらず、日本年金機構の案内で示されている要件です。対象になるかは勤務先か年金事務所で確認を。
いつから反映されるか
終了日の翌日が属する月以後3か月間の報酬の平均をもとに、4か月目の標準報酬月額から改定されます。改定後の額は1月〜6月の改定なら当年8月まで、7月〜12月なら翌年8月まで(日本年金機構の案内)。⚠️ 復帰してすぐ下がるわけではありません。
⚠️ 保険料が下がる=将来の年金も下がるという裏側
標準報酬月額は保険料の計算のもとであると同時に、将来の厚生年金の額の計算のもとでもあります。②で下げれば毎月の負担は軽くなりますが、⚠️ その期間の年金の計算も下がった額で行われます。 その下がりを年金の計算だけ元に戻すのが③です。
③ ★養育期間標準報酬月額特例申出書
★年金を下げないための手続き(保険料は下がりません)
⚠️ 取り違えないでください。保険料が安くなる制度ではありません。 保険料は下がった標準報酬月額のまま計算され、年金額を計算するときだけ育休前の高いほうの額とみなす制度です。
三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者…が、…申出…をしたときは、…その標準報酬月額が…基準月…の標準報酬月額(…「従前標準報酬月額」という。)を下回る月…については、従前標準報酬月額を…第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。— 厚生年金保険法 第26条第1項
★「みなす」対象が第43条第1項=年金額の計算の基礎に限られている。これが「保険料は下がらない」根拠です。
子どもが3歳に達するまでの養育期間中に標準報酬月額が低下した場合、養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないようその子どもを養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる仕組みです。— 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
★時短と年金の関係は時短勤務にすると、将来の年金が減りますへ。⚠️ ②を出す人は必ず読んでください。
3歳未満の子を養育していることが条件
対象は3歳未満の子を養育している(していた)厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方で、各月の標準報酬月額が養育開始月の前月の額を下回る場合。期間は養育開始月から子の3歳の誕生日のある月の前月まで(日本年金機構の案内)。
⚠️ 育休を取っていなくても、3歳未満の子を育てていて給料が下がっていれば対象になり得ます。
★2年前までさかのぼって申し出できる
出し忘れに気づいても手はあります。
(当該申出が行われた日の属する月前の月にあつては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る。)— 厚生年金保険法 第26条第1項
なお、申出日よりも前の期間については、申出日の前月までの2年間についてみなし措置が認められます。— 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
★申出をした月の前月から数えて2年間はさかのぼれます。 復帰して1年後に気づいた場合でも間に合う可能性があります。⚠️ 逆に2年を超えた部分は戻りません。気づいたらすぐ動きましょう。
父親も対象になる
条文の主語は「三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者」で、⚠️ 性別を限定していません。 父親が復帰後に時短などで給料が下がった場合も同じように申し出ができます。夫婦それぞれが自分の勤務先を通して出します。
出し方と添付書類
届書の名称は、日本年金機構のページの表記で「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」。被保険者が事業主を経由して提出し、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所。⚠️ 退職された方は本人から直接提出することもできます。
添付書類は原則として戸籍謄(抄)本など申出者と子の身分関係を証明できるものと、同居を確認できる住民票の写し。⚠️ ただし一定の場合には省略できるとされ、条件はケースで変わります。必要書類は年金事務所か勤務先に確認してください。
そのほか復帰時に確認すること
育休中の社会保険料免除はいつ終わるのか
免除は復帰した瞬間に月割りで終わるわけではありません。健康保険法は免除される月をこう定めます。
その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの月— 健康保険法 第159条第1項第1号
たとえば終了日が3月31日なら翌日は4月1日、その前月=3月分までが免除という読み方です。全体像は育休の終わる日を1日ずらすだけで、社会保険料が1か月分変わりますへ。
扶養・住民税・年末調整まわり
- 育休中に止まっていた住民税の天引き(特別徴収)が復帰後どう再開されるか
- 健康保険の扶養に入れていた家族の扱いを変える必要があるか
- 年末調整の書類を出し直すか
⚠️ この3つは勤務先の運用や自治体で扱いが違います。 復帰面談で担当部署へまとめて聞くのが早いです。出産前後の全体像は出産後にやる手続き全リストへ。
提出先ごとの早見表
| 手続き | 起点 | 出す先 | 提出時期 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金の支給申請 | 原則は事業主(本人の場合も) | 管轄のハローワーク | 「次回支給申請日指定通知書」に印字された期間 |
| 育児休業等終了時報酬月額変更届 | ⚠️ 本人の申出→事業主が提出 | 事務センターまたは年金事務所 | 速やかに |
| 養育期間標準報酬月額特例申出書 | ⚠️ 本人の申出→事業主を経由 | 事務センターまたは年金事務所 | 申し出があったとき(★2年さかのぼり可) |
よくある質問
Q. ②と③、どちらか片方でいいですか。
A. ②は保険料を実態に合わせるもの、③は年金額の下がりを防ぐもの。給料が下がるなら両方の検討を。
Q. ③を出すと保険料も安くなりますか。
A. ⚠️ なりません。条文で「みなす」とされるのは年金額の計算の基礎だけです。
Q. 復帰から1年以上経ちました。もう手遅れですか。
A. ★③は申出をした月の前月までの2年間さかのぼれます。まだ間に合う可能性があります。
この記事のまとめ
- 育児休業給付金の最後の申請は自動では終わらない。⚠️ 時効は2年(雇用保険法 第74条)
- ②は⚠️ 本人の申出が起点。「1等級以上の差」は条文ではなく日本年金機構の案内の要件
- ③は⚠️ 保険料ではなく年金額のための制度。★申出月の前月までの2年間はさかのぼれる
- 迷ったら勤務先・年金事務所・ハローワークへ。⚠️ 共済組合の加入者は共済組合へ
この記事について
この記事はイクジヒロバが公開したものです。運営:やすぴ。内容は雇用保険法・健康保険法・厚生年金保険法および日本年金機構・厚生労働省の公表情報にもとづいて記載しています。⚠️ 給付率・上限額は改定されます。また共済組合加入者は取り扱いが異なります。 実際の手続きは勤務先・年金事務所・ハローワークにご確認ください。運営者・監修者のプロフィールは運営者情報をご覧ください。
日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html
e-Gov法令検索「厚生年金保険法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115


