育休から戻って、時短で働く。給料は下がるけれど、その分は仕方ない——そう思っていました。
⚠️ 下がるのは、いまの給料だけではありません。
将来もらう年金も、一緒に下がります。
ただし、防ぐ手続きがあります。 そして⚠️ その手続きには、期限のような制限があります。
結論:知らないと失うもの
- ⚠️ 時短などで給料が下がると、将来の年金も下がります。何もしなければ、そのままです
- ⚠️ 申し出れば、年金の計算だけは「下がる前の給料」で扱ってもらえます
- ★ ⚠️ 保険料は下がったままです。払う額は増えません。⚠️ 申し出て損をする要素がありません
- ⚠️ 自動ではありません。自分から出さないと、何も起きません
- ⚠️ 遡れるのは、申し出た月の前月までの2年間だけ。それより前は、戻りません
- ⚠️ 父親も対象です。母親だけの制度ではありません
なぜ、年金まで下がるのか
厚生年金の額は、働いていた期間の給料の平均で決まります。
給料が下がった月は、その低い額のまま平均に入ります。時短で3年働けば、その3年分がまるごと低い額として記録されます。
⚠️ 一度記録されると、あとから「あれは育児中だったので」とは言ってもらえません。
防ぐ制度があります
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」といいます。長い名前ですが、中身は単純です。
養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないよう、その子どもを養育する前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる仕組みです— 日本年金機構
⚠️ 3歳未満の子を育てていて、給料が下がった期間が対象です。
★ここが大事:保険料は上がりません
「年金の計算を高い額でやってもらえるなら、保険料も高くなるのでは」と思いますよね。
なりません。
法律の条文を見ると、みなす対象がはっきり限定されています。
従前標準報酬月額を当該下回る月の第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす— 厚生年金保険法 第26条第1項
第43条第1項は、年金の額を計算する条文です。つまり⚠️ 「みなす」のは年金額の計算のときだけで、保険料の計算には及びません。
保険料は下がった給料のまま、年金だけ下がる前の扱い。 申し出る側に不利な点がありません。
⚠️ なのに、自動では適用されません。
対象になる人
ここを誤解している方が多いところです。
| 子の年齢 | 3歳未満(3歳の誕生日のある月の前月まで) |
| 父・母 | ⚠️ どちらでも。条文に性別の限定はありません |
| 育休を取ったか | ⚠️ 関係ありません |
| 時短かどうか | ⚠️ 関係ありません。残業が減って下がった場合も対象です |
| 条件 | 給料(標準報酬月額)が、子を育て始めた月の前月より下がっていること |
| ⚠️ 同居 | ⚠️ 必要です(住民票で確認されます) |
⚠️ 「時短の人の制度」だと思われがちですが、条件は「下がったかどうか」だけです。
夜勤を外れた、残業をやめた、部署が変わった——理由は問われません。
そして⚠️ 父親も対象です。 残業を減らした父親、時短にした父親、どちらも申し出られます。父親の育休そのものについては産後パパ育休は「手取り10割」になる?にまとめています。
⚠️ 遡れるのは2年。ここが一番の損失
条文に、はっきり書かれています。
当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る— 厚生年金保険法 第26条第1項
⚠️ 申し出た月の前月から数えて、2年より前は対象外です。
子が3歳になる直前に気づいて申し出た場合、最初の1年分は取り戻せません。 手続きが遅れた分だけ、将来の年金が確定で減ります。
⚠️ 気づいた時点で、すぐ出してください。 迷っている期間が、そのまま損になります。
出すもの
「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を、⚠️ 勤務先を経由して年金事務所(または事務センター)に出します。
⚠️ 退職した方は、本人から直接出せます。 辞めたあとでも、過去2年分は申し出られます。
添付するものは次のとおりです。
- 戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書(申出者と子の関係が分かるもの)
- 住民票の写し(子の生年月日と、⚠️ 同居していることが分かるもの)
⚠️ 注意点が3つあります。
- ⚠️ コピーは不可です
- ⚠️ 住民票は提出日から遡って90日以内に発行されたもの
- マイナンバーを申出書に書けば、添付を省ける場合があります。⚠️ ただし審査に1か月ほどかかることがあります
⚠️ 育休明けに出す場合は、育児休業終了日の翌日が属する月の初日以後に発行された住民票が必要です。復帰してすぐ取りに行くと、日付が早すぎて出し直しになります。
日本年金機構「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」手続概要 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20141203.html
いつ終わるか
次のどれかに当てはまると、その子についての特例は終わります(厚生年金保険法 第26条第1項)。
- 子が3歳になったとき
- 次の子の産前産後休業を始めたとき
- 育児休業を始めたとき
- 退職などで厚生年金の被保険者でなくなったとき
- 子を養育しなくなったとき
⚠️ 二人目の産休に入ると、一度そこで終わります。 二人目でまた給料が下がるなら、⚠️ その子について改めて申し出が必要です。「一度出したから大丈夫」ではありません。
なお育児休業の期間そのものは、保険料が免除される別の仕組みがあります。⚠️ この特例が効いてくるのは、主に「復帰したあと」の期間です。
対象にならない人
⚠️ 自営業・フリーランスの方は対象外です。 この制度は厚生年金の話なので、国民年金の方には当てはまりません。
ただし⚠️ 国民年金には別に、令和8年10月から始まる育児期間の保険料免除があります。 そちらは自営業・フリーランス・経営者に育休はない?にまとめました。
よくある質問
Q. もう時短を始めて1年半経ちました。間に合いますか?
A. ⚠️ 間に合います。申し出た月の前月から2年間が対象なので、1年半前まで遡れます。⚠️ ただし放っておくと、古い月から順に対象外になっていきます。
Q. 会社に言わないと出せませんか?
A. 在職中は⚠️ 勤務先を経由して出す決まりです。退職後なら本人から直接出せます。
Q. 夫婦どちらも時短にしています。両方出せますか?
A. それぞれが被保険者なら、それぞれ申し出られます。 一方だけという決まりはありません。
Q. 出しても給料は増えませんよね?
A. 増えません。⚠️ 変わるのは将来受け取る年金の額だけです。ただし⚠️ 保険料も増えないので、申し出る側に不利はありません。
Q. 単身赴任で、子と住民票が別です。
A. ⚠️ 同居が確認できることが要件になっています。事情がある場合は、年金事務所に個別に相談してください。
まとめ
- ⚠️ 時短などで給料が下がると、将来の年金も下がります
- 申し出れば、年金の計算だけ下がる前の額で扱われます。⚠️ 保険料は下がったまま=不利がありません
- ⚠️ 自動ではありません。出さなければ、何も起きません
- ⚠️ 遡れるのは申し出た月の前月までの2年間。遅れた分は戻りません
- ⚠️ 父親も対象。時短でなくても、残業が減って給料が下がったなら対象です
- ⚠️ 同居が要件。住民票は90日以内発行・コピー不可
- ⚠️ 二人目のときは、改めて申し出が必要です
育休や給付金の話は聞く機会がありますが、この手続きは誰も教えてくれません。 会社が案内してくれるとも限りません。
⚠️ まずは自分の給料が、子どもが生まれる前より下がっているかどうかだけ確かめてください。 下がっていれば、出す価値があります。
出産前後の手続き全体は、出産後の手続き全リストにまとめています。育休中のお金は育児休業給付金はいくら?、保育園のことは保活はいつから?をご覧ください。
この記事について
この記事はイクジヒロバが公開したものです。運営:やすぴ。制度の内容は厚生年金保険法および日本年金機構の公表資料をもとに記載しています。⚠️ 個別の適用可否は、お勤め先または年金事務所にご確認ください。 運営者・監修者のプロフィールは運営者情報をご覧ください。
厚生年金保険法 第26条(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115
日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」(2025年1月6日更新) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html


