保育園のお迎えがあるのに、残業を頼まれる。
「残業しない」と会社に請求できる制度が、法律にあります。 しかも2025年4月に、対象がぐっと広がりました。
ただし、似た名前の制度が4つあって、中身も強さも違います。 ここを分けて説明します。
結論
- 残業免除(所定外労働の制限)の対象が、3歳未満から「小学校就学前」に拡大しました(2025年4月)
- ★ 「残業免除」と「時間外労働の制限」は別の制度です。混同されています
- ★ ⚠️ この2つは、条文上、期間を重ねられません。 どちらか一方を選ぶことになります
- 請求は制限開始予定日の1か月前まで
- ⚠️ 「事業の正常な運営を妨げる場合」は、この限りでないというただし書があります
- 請求したことを理由に不利益な扱いをすることは禁止されています
★まず、4つを分けます
名前が似ていて混乱するので、先に並べます。すべて育児・介護休業法の別々の条文です。
| 制度 | 何ができるか | 対象の子 |
|---|---|---|
| 残業免除(所定外労働の制限) | ★ 所定労働時間を1分も超えない | 小学校就学前 |
| 時間外労働の制限 | 残業を月24時間・年150時間までに抑える | 小学校就学前 |
| 深夜業の制限 | 午後10時〜午前5時に働かせない | 小学校就学前 |
| 時短勤務(所定労働時間の短縮) | 所定労働時間そのものを短くする | 3歳未満 |
★ いちばん強いのは「残業免除」です。 残業をゼロにできます。
★ 時短勤務だけが3歳未満で、ほかの3つは小学校就学前まで使えます。
2025年4月に、残業免除の対象が広がりました
厚生労働省の資料に、改正の前後がこう整理されています。
| 施行前 | 施行後(2025年4月〜) | |
|---|---|---|
| 請求できる人 | 3歳未満の子を養育する労働者 | ★ 小学校就学前の子を養育する労働者 |
★ 3歳を過ぎたら使えない制度ではなくなりました。 時短勤務が3歳で終わったあと、ここが効いてきます。
時短が終わったあとの話は時短勤務にすると将来の年金が減りますにもまとめています。
残業免除(所定外労働の制限)とは
条文はこうです。
事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって…当該子を養育するために請求した場合においては、所定労働時間を超えて労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。— 育児・介護休業法 第16条の8第1項
★ 「所定労働時間を超えて労働させてはならない」。つまり定時で上がれるということです。
請求のしかた
前項の規定による請求は…その期間中は所定労働時間を超えて労働させてはならないこととなる一の期間(一月以上一年以内の期間に限る…)について、その初日…及び末日…とする日を明らかにして、制限開始予定日の一月前までにしなければならない。— 同 第16条の8第2項
- 期間は1か月以上1年以内で区切って請求します
- ⚠️ 1か月前までに出す必要があります。 明日から、はできません
- 何回でも請求できます(期間を区切るだけなので、続けたければ更新します)
★ 復帰の面談のときに、最初の1年分を出しておくのが実務的です。
★「時間外労働の制限」は、別の制度です
名前が似ていますが、中身が違います。
事業主は…小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者…が当該子を養育するために請求したときは、制限時間(一月について二十四時間、一年について百五十時間をいう。…)を超えて労働時間を延長してはならない。— 育児・介護休業法 第17条第1項
| 残業免除 | 時間外労働の制限 | |
|---|---|---|
| 残業は | ★ ゼロ | 月24時間・年150時間まではあり |
| 根拠 | 第16条の8 | 第17条 |
| 期間 | 1か月以上1年以内 | 1か月以上1年以内 |
★ 「残業を減らしたい」なら時間外労働の制限、「残業をなくしたい」なら残業免除、という選び方になります。
⚠️ この2つは、同時には使えません
ここが見落とされている点です。条文にこう書かれています。
この場合において、この項前段に規定する制限期間については、第十七条第二項前段…に規定する制限期間と重複しないようにしなければならない。— 育児・介護休業法 第16条の8第2項
★ 「重複しないようにしなければならない」。つまり期間を重ねられません。
⚠️ どちらか一方を選びます。 迷ったら、まず残業免除のほうを請求するのが分かりやすいと思います。
深夜業の制限(午後10時〜午前5時)
事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者…が当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時までの間…において労働させてはならない。— 育児・介護休業法 第19条第1項
★ こちらは残業免除と重ねて請求できます(条文に重複禁止の定めがありません)。
ただし、2点だけ違いがあります。
| 深夜業の制限 | |
|---|---|
| 期間 | ⚠️ 1か月以上6か月以内(ほかは1年以内) |
| 請求できない場合 | ⚠️ 深夜に、その子を保育できる同居の家族などがいるとき |
⚠️ 同居家族がいると請求できないことがあるのは、この制度だけの条件です。
⚠️ ただし書があります
正直に書きます。子の看護等休暇のように「拒むことができない」とはなっていません。
3つの制度すべてに、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」という一文があります。
★ とはいえ、「忙しいから」で済む話ではありません。 その人が抜けると事業が回らない、という具体的な事情が要ります。
⚠️ 納得できないときは、勤務先ではなく、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。 会社と話す前に、そこで整理してもらうほうが早いことがあります。
「拒むことができない」ほうの制度は子の看護等休暇にまとめています。
請求したことで不利益に扱われることは禁止されています
3つとも、それぞれに禁止条文があります。
事業主は、労働者が第十六条の八第一項…の規定による請求をし、又は…所定労働時間を超えて労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。— 育児・介護休業法 第16条の10
同じ内容が、時間外労働の制限には第18条の2、深夜業の制限には第20条の2、時短勤務には第23条の2として置かれています。
★ 請求したこと自体を理由に、評価を下げたり、配置を変えたりすることは禁じられています。
どう使い分けるか
| こうしたい | 使う制度 |
|---|---|
| 定時で上がりたい | ★ 残業免除(所定外労働の制限) |
| 残業は少しならできる | 時間外労働の制限 |
| 夜勤・遅番を外したい | 深夜業の制限(★残業免除と併用可) |
| 勤務時間そのものを短くしたい | 時短勤務(3歳未満) |
★ 「残業免除 + 深夜業の制限」の組み合わせが、いちばん強い形になります。
時短にともなうお金のことは育児時短就業給付金はいくら?にまとめています。
この記事のまとめ
- 残業免除(所定外労働の制限)は、2025年4月に3歳未満から小学校就学前へ拡大
- ★ 残業免除は「所定労働時間を1分も超えない」。 いちばん強い
- ★ 「時間外労働の制限」は月24時間・年150時間までの別制度
- ★ ⚠️ この2つは条文上、制限期間を重複させられない=どちらか一方
- 深夜業の制限は午後10時〜午前5時。★ 残業免除と併用できるが、⚠️ 期間は6か月以内で、
⚠️ 深夜に子を保育できる同居家族がいると請求できないことがある
- 時短勤務だけが3歳未満
- 請求は制限開始予定日の1か月前まで。期間は1か月以上1年以内
- ⚠️ 「事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」というただし書がある
- 請求を理由にした不利益な取扱いは禁止(第16条の10 ほか)
復帰時に出す書類は職場復帰で出す書類まとめにまとめています。
この記事について
この記事はイクジヒロバが公開したものです。運営:やすぴ。内容は育児・介護休業法および厚生労働省の公表資料にもとづき、2026年(令和8年)9月時点で記載しています。
⚠️ 労使協定の内容によって、請求できる範囲は変わることがあります。また「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかどうかは個別の判断になります。 具体的な取り扱いは勤務先、または都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご確認ください。運営者・監修者のプロフィールは運営者情報をご覧ください。
e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf


